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若手ジャズミュージシャンたちによるジャズ界のレジェンドたちへのリスペクト

Jazz Orchestra of The Legacy Successors MONDAY NIGHT BIG BAND LIVE 2017.08.21[mon] 六本木クラップス 今沢辰彦

 2017年8月、Jazz Orchestra of The Legacy Successorsという名のビッグバンドが、東京のジャズシーンに登場した。メンバーは20代から30代前半の若手ジャズミュージシャンたちで、彼らを束ねるリーダーは気鋭のジャズフルート奏者・片山士駿。旗揚げ公演となったこの日、片山はフルートを封印し、アルト1本で2ステージを務めた。  バンドのコンセプトは、その名の通りジャズ界の伝説的な成功者たちをリスペクトしつつ、彼らの作品を演奏するもの。先達たちの偉業に、正面からしっかりと向き合おうとするものと言っても良いだろう。このバンドで演奏するときにのみに使用すると思われるヴィンテージ楽器を携えたメンバーも散見されたが、それもThe Legacy Successorsに対する敬意の表れかもしれないと思えた。客席にはステージ上と同世代の観客が多く、新バンドのお披露目に集まる期待の高さがうかがえたが「30年間ベイシーの曲を演奏しています」「サド&メルの日本公演に行きました」というような、社会人ビッグバンドのおじさんプレイヤー的な観客が皆無だったのは少し残念な気がした。  デューク・エリントン楽団、カウント・ベイシー オーケストラ、サド・ジョーンズ&メル・ルイス オーケストラのナンバーからなるセットリストは、アップテンポ、ミディアム、バラードなどバランスよく構成され、観客を飽きさせない。演奏技術は素晴らしく、音大のジャズ科で学んだミュージシャンがずらりと並ぶだけあって、聞きごたえは十分。一つ一つの音がキレイな粒となって次から次に耳から体の中にまで注がれるような心地よさ、バンド全体が一つの楽器になったようなダイナミクス、テュッティの煌びやかな感じなど、生身の人間が目の前で演奏している空間でしか経験できない、とてもゴージャスな時間を味わうことができた。あえて言うなら、正確無比な演奏は良くも悪くもカッチリし過ぎていて、ある種ジャズ的とも形容されるようなルーズさや、ハメを外してぶっ飛んだ勢いのようなものが欲しかった…と思うのはちょっと欲張りすぎだろうか。  帰り途にはライブの余韻とともに「ビッグバンド」についてのさまざまなことが頭をよぎった。若いミュージシャンたちが、先達の仕事から自分たちの音楽を紡ぎだそうとしている向上心に好感を持つのと同時に、エリントンやベイシー、そしてサド&メルの醸し出す「らしさ」とは何だろうか、と。このライブは若手ミュージシャンの勉強会でもあり、公開実験の場でもあるのかもしれない。次回以降の公演も企画しているようだが、回を重ねるにつれて、演奏者たちのマインドに、どんなケミストリーが起こっていくのか楽しみなバンドだと思えた。 文/今沢辰彦 Trumpet Sec. 村上 基、佐瀬悠輔、三上貴大、望月敬太 Trombone Sec. 張替啓太、西村健司、坂本菜々、笹栗良太 Reed Sec. alto 片山士駿、tenor 渡邊恭一、alto 佐藤敬幸、tenor 芹澤 朋、bariton 宮木謙介 Rhythm Sec.、Piano 加藤友彦、Bass 小林航太朗、Drums 柳沼佑育

Set List 1st Sunset And The Micking Bird Don't Git Sassy Shiny Stockings April In Paris The More I See You Whirly Bird 2nd Mean What You Say Upper Manhattan Medical Group Fair And Warmer Isfahan Ad lib On Nippon Blues In Frankie's Flat

今沢辰彦(いまざわ・たつひこ) バブル世代のジャズファン。学生時代にはビッグバンドのサークルに所属してアルトサックスを担当。当時好きだったプレイヤーはフィル・ウッズ(ビッグバンドのリードアルト奏者としても多くの録音あり)、最近ではヴァンガード・ジャズ・オーケストラのディック・オーツがお気に入り。




Photo by Akira Tsuchiya

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