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カバー曲で構成されたこの日のステージは時間を忘れさせてくれる温かい空気に包まれていた。

石川周之介カルテット Shunosuke Ishikawa QUARTET with Special Guests 2018.1.18[tue] at 六本木クラップス 今沢辰彦

 ジャズ、ファンク、ボサノヴァ……多彩な活動を繰り広げているテナー奏者・石川周之介が、2018年最初のライブに選んだ曲は全てカバー曲。ジャズの名曲からブラジルの国民的な楽曲、全米でヒットしたポップスまで幅広く取り揃え、自身のアレンジでのお披露目となった。この日は石川のレギュラーカルテットに、スペシャルゲストとして田中充(tp)、榎本裕介 (tb)、石垣健太郎 (g&se)を加えたメンバー構成だ。  オープニングはベニー・ゴルソンの名曲で、クインシー・ジョーンズ・オーケストラの演奏でも知られている「Killer Joe」。おなじみのリズムパターンから曲が始まり、フロントの3人がユニゾンを、そしてハーモニーを奏でると3管とは思えないほどのゴージャスかつダイナミックなサウンドが会場を包み込む。スティービー・ワンダーの「Tuesday Heartbreak」やジェイミー・カラムの「Mind Trick」など、次々に洒落っ気のあるアレンジでセットリストが進行し、多くの女性ファンで埋まった客席が、どんどんステージに引き込まれていく。  石川については、高音域のフラジオで吠えまくったり、超高速フレーズを吹きまくるような印象はなかったが、この日もその通りだった。派手さはないが、一つ一つの音を丁寧に、そして大切に紡ぎだしていく。延々と自分のソロを繰り広げるのではなく、短いコーラス数の中で起承転結をしっかりつけて、ある意味で「わかりやすい」プレイを心がけているようにも感じた。それこそが「観客を楽しませる」プレイと言っても良いかもしれない。  学生時代にビッグバンドをやっていたことが関係しているかどうかは不明だが、3管のアレンジにはアンサンブルのエッセンスが詰め込まれているように思えた。ユニゾン、ハーモニー、それぞれが心地よく胸に響く。温かみがあって、キラキラと輝くような音が会場内に満ちている。ゲストの田中と榎本は、ともに音色が綺麗なプレイヤーとして一定の評価を得ているが、自分のアレンジを体現するために、その2人を起用したのも頷ける。ホーンセクションのみならず、リズムセクションのメンバー各自の見せ場もしっかり用意されていて、それぞれのプレイヤーの持ち味を堪能できた。  2セット、そしてアンコールまで、時間経つのがこんなに早く感じるライブも滅多にない。終演後には石川自らが店の出口で、来場客一人ひとりと握手しながら一言二言交わしていたのも、心温まる光景だった。 1st stage 1. Killer Joe 2. Tuesday Heartbreak 3. Mind Trick 4. Pure Imagination 5. Bad 6. Struttin' My Stuff 2nd stage 1. Mox Nix 2. Saints 3. Spinning Wheel 4. Mas Que Nada 5. エイリアンズ 6. Change the World

石川周之介 (sax&fl) 後藤 魂 (pf&key) 寺尾陽介 (b) 工藤 明 (ds) Special Guests: 田中 充 (tp) 榎本裕介 (tb) 石垣健太郎 (g&se) 今沢辰彦(いまざわ・たつひこ) バブル世代のジャズファン。学生時代にはビッグバンドのサークルに所属してアルトサックスを担当。当時好きだったプレイヤーはフィル・ウッズ(ビッグバンドのリードアルト奏者としても多くの録音あり)、最近ではヴァンガード・ジャズ・オーケストラのディック・オーツがお気に入り。




Photo by Akira Tsuchiya

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